ユニクロ「年収100万円」発言にみる、「平等幻想」が壊れる未来

ユニクロの柳井社長の発言が話題になっていますね。

朝日新聞デジタル：「年収１００万円も仕方ない」ユニクロ柳井会長に聞く - 経済・マネー

グローバリゼーションという不可避の変化

ユニクロの一手は、その善悪はどうあれ、不可避の変化だとも思います。資本主義の圧力に晒されているかぎり、グローバリゼーションの波に飲まれることは仕方がない話です。

今回のケースはユニクロがたまたま先陣を切っただけで、彼らが黙っていたとしても、いずれ他の企業が着手することになっていたでしょう。

世界の賃金がフラット化されていくことは、もう大昔から指摘されつづけてきたことです。いよいよ本格的に、日本人の雇用が脅かされる時代になってきたのです。

格差が広がり、平等幻想が壊れる

日本社会の特徴は、その「平等」意識にあるとぼくは考えています。小学校の頃、「みんな一緒」が理想とされ、「人間はみな平等だ」と刷り込まれた覚えがある方は少なくないでしょう。

「一億総中流」なんてことばが示すように、日本はそれなりに豊かなので、「みんな一緒」はギリギリ機能してきました。民族的な多様性も薄いので、鈍感に生きていれば、自分の常識＝他人の常識という規範に違和感を覚えることもありません。

多くの日本人は、肌感覚として「日本は平等だ」と無意識的に思い込んでいます。それゆえに「生活保護は恥だ」という無理解が発現してくるのでしょう。

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言わずもがな、日本の内実を見れば、決して現状は「平等」ではありません（格差の現実を見るのなら、たとえば「若者ホームレス白書」がおすすめです。虐待を受け家を逃げ出すように就職し、ホームレスになった方、児童養護施設を経てホームレスになってしまった方などのインタビューが掲載されています。）。

この社会には明らかな格差が存在し、現に貧困にあえいでいる人たちが存在します。「日本は平等だ」と盲目的に思い込んでいる人は、そうした現実に鈍感な人々といっても過言ではないでしょう。

「平等幻想」が保たれていた日本でしたが、柳内社長が旗振るように、これからは「年収1億円か100万円に分かれる」、強烈な格差社会が立ち現れます。

明らかな格差が目に見えるようになれば、さすがに日本人は鈍感に徹することができなくなるでしょう。社会的強者、社会的弱者という切り分けは、今よりもクッキリと見えるようになっていくはずです。たとえば住んでいる場所、着ている服、食べている物などでも、貧富の差が明示されるようになっていくでしょう。

「平等幻想」崩壊後の日本

平等幻想が壊れたのち、日本社会はいったいどうなるのでしょうか。

悲観的な未来としては、強者が弱者を、弱者が強者を相互に攻撃しあう、魔女狩り社会が訪れます。日本には絶対的な神がいませんから、攻撃性の歯止めは掛かりにくいかもしれません。

楽観的な未来としては、金銭的な意味での強者と、金銭的な価値観から脱却した強者（それこそ「年収150万円で僕らは自由に生きていく」と語れるような）が「ノブレス・オブリージュ」を実践し、貧困問題が緩和されていく、というストーリーも考えられます。

無論、牽引すべきは楽観的な未来です。社会的強者／社会的弱者というメカニズムを駆動すべき時期が来ています。

社会的強者に求められるのは、弱者を救う義務です。自分を卑下しがちな日本人からすると、「自分は強者だ」と認識し、「弱者を救う」というのはいささか傲慢に思えるのかもしれません。

が、格差が広がっていけば、そんなことを言っている場合ではなくなります。強者に当てはまる人たちは、「現状は平等である」という鈍感な幻想をいい加減捨てるべきです。

みなさんは社会的弱者ですか？社会的強者ですか？かくいうぼくは、もちろん社会的強者に当てはまる人間です。

強者だと思うのなら、ぜひご自身の力を、社会的な課題の解決に役立ててください。社会的課題の解決は、できれば資本主義的な価値観に囚われず、採算度外視で実践すべきだとも思います。

うつ病で体を壊している、やむを得ない事情で貧困にあえいでいる、ひとり親世帯であるなどなど、ご自身を社会的弱者だと認識するのなら、まず、卑屈になってはいけません（とてもむずかしいことだと思いますが…）。「自己責任」を引き取りすぎるのは危険です。

さらに、もし可能であれば、ぜひ等身大の人間として声を挙げてみてください。特にネットでは間違いなくボロクソに叩かれるので、強いることはできませんが、声を挙げることで、今困っている他の誰かの助けになれるはずです。